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高松高等裁判所 昭和47年(ネ)42号 判決

控訴人(附帯被控訴人) 村越光義

控訴人(附帯被控訴人) 村越敏男

右両名訴訟代理人弁護士 山中順雅

被控訴人(附帯控訴人) 矢畑禎次

〈ほか七名〉

右八名訴訟代理人弁護士 佐野孝次

主文

本件控訴を棄却する。

被控訴人(附帯控訴人)の附帯控訴および請求の拡張にもとづき原判決を左のとおり変更する。

控訴人(附帯被控訴人)らは各自、被控訴人(附帯控訴人)矢畑禎次に対し四三万二四三三円および、うち四〇万二四三三円に対する昭和四四年一一月七日から、うち三万円に対するこの判決確定の日から、各完済まで年五分の割合による金員を、その余の被控訴人(附帯控訴人)らに対し各一二万四九八〇円、および、うち各一一万四九八〇円に対する昭和四四年一一月七日から、うち各一万円に対するこの判決確定の日から、各完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

被控訴人(附帯控訴人)らのその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審を通じこれを二分し、その一を被控訴人(附帯控訴人)らの、その余を控訴人(附帯被控訴人)らの各連帯負担とする。

この判決は金員の支払を命じた部分に限り仮に執行することができる。

事実

控訴人(附帯被控訴人、以下単に控訴人という)ら代理人は、「原判決中控訴人ら敗訴部分を取消す。被控訴人(附帯控訴人、以下単に被控訴人という)らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決、ならびに、被控訴人らの附帯控訴および当審で拡張された請求につきいずれも棄却の判決を求め、被控訴人ら代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決、ならびに、附帯控訴および請求を拡張して「原判決を左のとおり変更する。控訴人らは各自、被控訴人矢畑禎次に対し七八万四七〇一円、および、うち七五万四七〇一円に対する昭和四四年一一月七日から、うち三万円に対する本判決確定の日から各完済まで年五分の割合による金員を、その余の被控訴人らに対し各二四万五六一九円、および、うち各二一万五六一九円に対する昭和四四年一一月七日から、うち各三万円に対する本判決確定の日から各完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。訴訟費用は第一、二審とも控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。

当事者双方の事実上法律上の主張、証拠の提出援用、その認否は、つぎのとおり附加するほか原判決事実摘示のとおりであるから、それを引用する。(ただし、原判決三枚目裏五行目から六行目にかけて「六万三二〇〇〇円」とあるのを「六万三二〇〇円」と訂正する。)

(被控訴人らの主張)

被控訴人らは、本訴第二審を維持するため、昭和四六年一二月一四日弁護士佐野孝次に対し、本訴第二審の訴訟遂行を委任し、同日着手金として一〇万円を支払い、第二審判決確定時に報酬として一四万円を支払うことを約した。右弁護士費用も本件事故と相当因果関係を有する被控訴人らの損害である。そして、被控訴人らは右弁護士費用を各三万円づつ負担することにしているので控訴人ら各自に対し、右弁護士費用各三万円およびこれに対する第二審判決確定の日から完済まで年五分の割合による金員を第一審主張の金員に附加して支払うことを求める。

(控訴人らの右に対する答弁)

右主張事実は不知。

(証拠)≪省略≫

理由

一  本件事故の発生、訴外矢畑マンヨの受傷に関する当裁判所の認定判断は、原判決理由一に記載のとおりであるから、それを引用する。

二  本件事故の態様、控訴人村越光義および訴外矢畑マンヨの過失に関する当裁判所の認定判断は、つぎのとおり附加するほか原判決理由二に記載のとおりであるから、それを引用する。

原判決六枚目裏三行目「マンヨの過失」とあるつぎに「(約三割と認める)」を附加する。

≪証拠判断省略≫

三  そこで控訴人村越敏男の自賠法三条に基づく責任について検討するに、≪証拠省略≫を綜合すると、控訴人村越敏男は、控訴人村越光義の父であるが、昭和四三年二月頃当時商業専門学校(二年制)在学中で一七才(昭和二五年一二月一六日生)の控訴人光義のために本件加害車(第二種原動機付自転車)を買い与えたものであること、控訴人光義は同年三月一〇日前記学校を卒業し、同年四月四日から今治市内の中央自動車に自動車修理工として就職し控訴人敏男方から通勤していたものであること、控訴人光義の給与は一ヶ月一万五〇〇〇円の約束であったが本件事故時までには一度も給与を得ていなかったこと、したがって、本件事故当時までに要した本件加害車の保険料その他の経費は控訴人敏男が負担したものであり、また、本件事故当時控訴人光義は、その生活を全面的に父である控訴人敏男に依拠して営んでいたもので、いまだ独立して生活する能力を有していなかったことなどの事実を認めることができ、右事実によれば、控訴人敏男は、本件事故について自賠法三条にいう運行供用者としての責任を負うものと解するのが相当である。

四  当審における弁護士費用を除く損害の発生、その額、被控訴人らがそれぞれ控訴人らに請求することのできる損害額等に関する当裁判所の認定判断は、つぎのとおり附加するほか、原判決理由四ないし六に記載のとおりであるから、それらを引用する。

≪証拠判断省略≫

五  そこで、当審における弁護士費用について判断するに、被控訴人らが、本訴第二審を維持するために弁護士を依頼せざるをえなかったことは弁論の全趣旨により明らかであり、被控訴人らがその主張どおりの約定で弁護士佐野孝次を依頼し、着手金として一〇万円を支払ったこと、および、右弁護士費用は被控訴人らが平等に負担することになっていることは≪証拠省略≫により認められ、本件訴額、訴訟の難易度、本訴認容額その他一切の事情を斟酌すると、右のうち被控訴人矢畑禎次について三万円、その余の被控訴人らについて各一万円をもって、本件事故と相当因果関係のある損害であると認める。

六  よって、被控訴人らの本訴請求は、被控訴人矢畑禎次において四三万二四三三円、その余の被控訴人らにおいて一二万四九八〇円、および、右のうち当審における弁護士費用に相当する部分を除く金員に対する本件事故より後の日である昭和四四年一一月七日から、当審における弁護士費用に相当する部分について本判決確定の日から、各完済まで年五分の遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却すべきところ、原判決は右限度以下で被控訴人らの請求を認容しているので、本件控訴は理由がないが、請求の拡張を伴う本件附帯控訴は右の限度で理由がある。したがって、本件控訴を棄却し、附帯控訴および請求の拡張に基づき原判決を右の趣旨において変更することとし、訴訟費用の負担について民訴法九六条、八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条を各適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 加藤龍雄 裁判官 後藤勇 小田原満知子)

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